東大病院の鍼灸臨床研修二年間を終えました!

約2年ぶりのブログ更新になってしまいました。

鍼灸あん摩マッサージ指圧師になって2年経ったともつぼです。

2024年3月この度、

東京大学医学部附属病院 リハビリテーション部 物理療法(鍼灸)部門

の二年間の研修を終えました!

研修について、参加の経緯やどんなことを学んだかというところを紹介していきます。

どうして興味を持ったのか

私が東大病院の研修に興味を持ったきっかけについて3点あります。

振り返ってみるとなんと全て鍼灸学校一年生の6月の出来事でした。

①卒後病院研修に行った先生の講演を聞いた

専門学校に進学するため脱サラし、富山から東京に来てホヤホヤの一年生の6月、

学校の案内を見て参加した津田昌樹先生のセミナー。

富山の鍼灸師さんが東京で講演だと・・!

富山で働く魅力とか質問してみたいな!

と思って参加してみました。

鍼灸師のキャリアの積み方についてのお話と接触鍼の実技とでとても充実した内容でした。

当時のメモの一部がこちら。

(まだiPadもってなくてノートにメモしていた!)

鍼灸のことを全く知らずに専門学校に進学したため、この言葉は心のメモにもしっかりと刻まれました。

津田先生は富山にある砺波総合病院の病院研修を受けていたそうなのですが、私も病院研修に行って医療現場を鍼灸師として体験してみたいな、砺波いいな・・と考えるきっかけになりました。

②せんねん灸の講演で粕谷先生の話を聞いた

津田先生の講演の約2週間後、せんねん灸銀座ショールームで講演があるとのこと。

東京の真ん中で、お灸を売ってる専門店で、鍼灸師さんがお話だなんて面白そうとただそれだけの理由で、参加しました。

こちらでも理系出身の私の興味を大いに引かせる興味深い鍼灸の研究の話がてんこ盛り。

気が~とか脈が~とか、鍼灸ってかなり感覚の世界なんだな・・と思っていた私は客観性のある話にとてもワクワクしました。

質疑応答時間では粕谷先生に質問も。

「現在私は鍼灸師になるため専門学校で勉強中だが、東大病院で働くにはどうしたらいいのか」

と。東大病院の鍼灸師っていうのもかっこいいし、エビデンスをもとに治療が出来るなんてかっこいい・・という気持ちから聞いたと思います。

なんて返答があったのかメモになく会場のみなさまの空気を和ませた記憶だけが残っていますが、はっきりしたことは言われなかったように思います。

東大病院に研修があるとその時教えてもらったとかではなかったと思いますが、この講演を聞いたことが、天下の東大病院で鍼灸やるってどんな気分なんだろ・・そんな選択肢もあるのか・・と興味を持ったきっかけになったと思います。

③ハリトヒト。のまとめサイトを見て

はたまた粕谷先生のセミナーの約2週間後、卒後研修先のリストが、津田先生が当時代表を務めていたハリトヒト。から、UP!

何気なく見ていたら、「東大病院」の名前もあり、リンク飛んで色々詳細を見て自分にもチャンスがありそうだと思いました。

「研修制度」を活用しよう!

そんなこんなで、色々重なって、せっかく東京に来たから、専門学校の3年間だけじゃなくて+1年か2年ならば受けるだけ受けてみようかな・・と思い、なんとなく東大病院の研修を受けてみたいのかもなと思った私です。

試験に向けて行った対策

東大研修に参加するには試験があり、その前に説明会があるとのこと。

志願して全員行けたらどんなにいいことか・・!

いずれにしても三年生になったら本格的に動かねばならないなと思いつつ、

そもそも東大っていうネームバリューにやられているだけで本当に学びになるのだろうか・・

説明会だけでなくて実際行っている人の話聞きたい!

と、まずは学校で粕谷先生の話を授業でちょくちょくしている先生に相談してみるコトに。

すると、東大病院の鍼灸治療室で職員として働いている鍼灸師の先生(つまり粕谷先生と働いている鍼灸師)が、学校に非常勤講師として柔整科に授業を受け持っているとのこと!

一度直接話を聞いてみる?とおっしゃってくれました。案外身近にいたことにびっくりでした。

 

コロナコロナで病院に見学とか接触とかが難しいなという当時のご時世の中の本当にありがたい機会です。

質問も事前にいくつか準備しました。

・どういった経緯で職員になって今どんなことをしているか
・他にはない東大病院の研修で得られること
・学生のうちに身に付けておいたらいい知識
・研修以外の日は何をしている人が多いのか

・・などなど詳細に話を聞くことが出来ました。

興味を持っていたものの一体どういうことを学べるところなんだ、と思っていたので気になっていた部分を解消することができ、ますます行ってみたいなと思うようになりました。

 

試験については詳細は聞けず、3年生の秋ごろオンラインで開催された東大研修の説明会にて明らかに。

過去の試験内容の例がサラッと紹介されており、一次は書類選考、

二次は小論文の問題臨床医学一般の筆記試験がでるということでした。

試験こんな感じで出るよと1の情報を聞いたところで具体的な対策は10も100もやっておかないといけないですが、

東大病院の鍼灸部門に必要とされそうな西洋医学寄りの知識とかを対策するくらいしか絞れないし、徒手検査とか臨床各論総論、まだまだ知識定着してないよ~と思いながら国試勉強をちょっといつもより頑張るつもりで勉強しました。

鍼灸の国試はマーク試験だから漢字を正確に覚える必要もないし、横文字を雰囲気で覚えていてもなんとかなりますが、

筆記試験となると選択肢がない書き取り問題が多数出ることが予想されたため、より正確に慎重に幅広く知識を身に付ける必要がありました。

こういう試験対策をしてたから受かったというような勉強はしてないです。。しようがなかったです。

 

あとから聞いたところによると、学校によっては例年受験した生徒にどんな問題がでたのか情報をもらって、志願者に数年分の過去問大体こんなんだぞと見せてくれるという学校もあるようで・・

そもそも落ちたら恥ずかしいから受験したことすら言ってない人もいそうだけど、、情報貰えるならうらやましいなと思いつつ、私は過去問見たところで傾向も対策も立てられないので事前に知ってたら萎縮していたかもしれないです。。

 

そんなこんなで、あとは当たって砕けろでまずは練りに練った志望動機書類送って一次選考突破し、

東大病院に赴いて二次筆記試験に撃沈し、面接では学校で話を聞かせてもらいお世話になった先生のお名前を間違えるという最悪の失礼をかましました。

良かったのは、小論文で、学校のサークルでたまたま読んだことあった粕谷先生の論文を、読んだことある前提でその感想を書けというが出て、

受験生で読んだことあるの私だけなのでは・・?というのだけで勝ち誇った感が出てたということです。

 

ですが受かった感触は全くなく、落ちたなという暗い気持ちで帰宅し、

せめて問題とか面接で何聞かれたか後輩につなげようとひたすら記憶を元にメモを残し、

いやでも二次試験にいたの10人くらいだったしHPに載ってる研修生も10人くらいだしワンチャン5人くらい受かるなら半分以上にはなるだろななどと悶々と結果を待っていました。

郵送で結果が来たのですが、本当に見たくなくて、旦那が俺が見てあげる、と言ってくれたのに甘えて自分で見れず・・

「受かってるよ」と言われてもしばらく嘘だと思ってふさぎこむという謎の時間を過ごしました。

色々ありましたが合格できました!

どんなことを研修したのか?

国試も無事突破して2022年4月からわくわくの東大研修生になりました。

東大研修は2年間あり、一年目と二年目で研修内容が異なります。

ざっくりこんな感じ。

・一年目 ①鍼灸治療見学、②勉強会、③年度末自由テーマで発表準備
・二年目 一年目同様の①②、④新規患者さんを受けもつ&年度末症例報告

それぞれ説明していきます。

①鍼灸治療見学

東大病院の鍼灸治療室には常勤の鍼灸師の先生が4人いらっしゃいます。

基本は一年を通じて、4人の先生について指導を受けますが、

私の年は粕谷先生がちょうど東大病院から去った年でした。


それもあってかなのか、私の年は研修生が3人、メインの指導してくれる鍼灸師の先生が3人で、新任の鍼灸師の先生が一人いました。

(毎年4人研修生がいるのに上限3人の年に受験し合格できてしまったことに改めて幸運を感じます。。)

4~7月はA先生、8~11月はB先生、12~3月まではC先生という具合につく先生が変わりました。

 

1日の流れとして。

基本は各研修生が各担当の先生について、先生が受け持つ患者さんの治療を見学します。

患者さんがキャンセルになったり予約がない時は、先生がこちらの要望を聞きつつ質問に答えてくれたり先生が鍼してくれたり鍼の練習台になってくれたり、世界の色んな論文をほぼフリーで見れる東大のPubmedなどで調べものしたり、図書館に行ったりというように過ごしました。

治療見学ではカーテンで仕切られたベッドに先生と一緒に入って、先生の治療をガン見できます。

毎週じ~~~っと治療を見学していると、新米鍼灸師から見た治療の姿として、どの先生もとても能力が高いと思いました。

 

治療すべきところはどこなのかの確認を徒手検査を含めた動きなどを確認したり筋肉単位で同定しているのがスゴイ

鍼管を立てて刺した後ちゃんと鍼管の立てた方向に鍼が刺さっているのもスゴイ

複数の筋肉に刺しきったあとでパルスを流してちゃんと動きが出るのもスゴイ

解説お願いしますと聞くと1聞いて100くらい返って来るのもスゴイと思いました。

 

私の鍼灸レベルと言語化力が低いのもあると思いますが、、どの先生についてもそれがみんな当たり前のようにできてすごかったしビビりました。

先生によってキャラもバックグラウンドも違うので、ベースの能力の高さがあるなあというところは共通しているものの、

同じ筋や神経を狙うにしても取穴のやり方がちょっと違ってたり、同じ疾患でも治療の流れや狙うところが違うなどもあり、

でもって同様のやり方をすれば標準的で基本的な治療は出来るなと思えることを学べたと思います。

 

そして、鍼苦手な私も実際に先生の鍼を受けてみてビックリ。

私はかなり痛みに敏感だと思っていましたが、東大の先生には大きく筋の収縮がでるくらいに響かせられてもそれが痛くなく、むしろもっとやってほしいと思えるような刺激でした。

パルスも出来れば受けたくない。。と思っていましたが、パルスを受けてた時の嫌だな、、という記憶って、どれも学生同士で練習してた時のものが多かったかもしれない・・と思いました。東大の鍼灸師の先生がやってくれたパルスは全然痛くないと思いましたし、痛くない鍼にもやり方があるのでしっかり自分のものにしています。

また、病院だから当然のように使い捨てのゴム手袋をして治療を行い、顔の鍼を行う時は感染対策でシールド付きのマスクをつけます。

コロナ以外にも、基礎疾患が多く免疫力のない患者さんもいるからこその感染対策についても学ぶことが出来たと思います。

ちなみに、東大病院の他の医療職の方とも交流はあるのかな~知り合いとかできるといいなとうっすら期待していましたが、

コロナが厳しい病院ならではで、マスクが任意になったあとも同じリハビリ部のお医者さんや理学療法士さんなどオンライン上で先生が話しているのを横で聞いていたり廊下などですれ違うことはあっても仕事でお話するような機会すらなく。。昔は飲み会とかもあったようなのですが。。ちょっとそこは残念だったかもしれないです。

②勉強会

東大研修では、勉強会を定期的に行っています。

オンライン上でOBOG研修生も担当持ち回りで参加する座学の勉強会、実技を中心とした勉強会です。

学校で習ったことの延長上にある話でしたが、各先生が専門としている顔面神経麻痺や慢性疼痛、不妊治療についてなど、どれも有料級の内容では・・というもので専門的でかなり勉強になりました。

また、全日本鍼灸学会などの発表の予演などもありました。私はやらなかったのですが、症例報告を学会で発表する研修生も例年いるそうです。

③年度末自由テーマで発表準備

一年目の年度末は研修生も1時間受け持ち、約50分の発表+質疑応答を行います。

自分の興味がある疾患に関して、そのメカニズムや分類、診断基準や評価方法など基本的な情報についてまとめ、

その疾患はガイドラインではどのように治療しているか、また、鍼灸治療ではどんな研究があるのかを紹介していきます。

 

ちなみに私は「つわりと鍼治療」について発表を行いました。

なぜこのテーマにしたかというと、つわり症状を訴える妊婦さんに鍼治療する機会があり、

こんな妊娠初期に鍼なんて禁忌じゃないの・・?

流産のリスクはないのか・・?

というのがとても気になっていたので、せっかくなので調べてみよう!ということで調べてみました。

調べてみるとオーストラリアでランダム化試験を行った信頼性の高い論文があり、出産したのか流産したのかどうなのか追跡調査も行っていて、知りたいことをかなり詳しく調べている研究でした。

14週未満のつわりのある時期の妊婦にセイリン三番鍼を内関に刺して回旋し、20分置くというやり方でしたが、痛そうですね~

内関の鍼はつわりの症状を軽減し、流産の確率は鍼を行っていない群と数値が大きく異なることはない、という報告になっていました。

鍼はしようがしまいが、流産は防止もできないし、促すこともない。

引用数の多い論文を自分で実際に調べて、1時間の発表にまとめて、やっと腑に落ちたからこれからつわりの鍼治療積極的にやろうと思いました。

 

この発表を通じて論文の調べ方や、鍼でどうアプローチしていいのか分からない疾患にぶち当たった時に、こういうように論文を参考にするんだなあということが分かったように思います。

④新規患者さんを受けもつ&年度末症例報告

二年目になると、東大病院の整形外科とか、内科とか、顔面神経外来とか、様々な科から鍼灸の処方がでた新規の患者さんを受け持つことになります。

受け持つと言っても、二年目は研修が火曜日なので、基本火曜に来れる患者さんでかつ、研修生が担当になっても大丈夫そうな患者さんを診るという感じでした。

まだ自分の勤めているところでの患者さん対応も慣れていないのに、「東大病院で働いている鍼灸師」の顔して治療にあたるなんて緊張するなあとドキドキでした。

この患者さんやってみる?となった時に、その患者さんが東大病院でどんな検査を受けてどんな結果でこれまでどういう既往歴があるのかどんな科の受診瀝があるか薬は何なのか、院内パソコンで電子カルテを見ます。

事前に入れておくべき情報をまとめつつ、その患者さんに似た状況の鍼の症例報告はないのかなどを一年目の発表準備かのごとく調べてまとめて、どんなふうに患者さんの評価を当日行うのか、どんな鍼灸治療をするのかを考えていきます。

MRI画像とか血液検査結果とか薬の処方がカルテに書いてあるけど、見ても何なのかわかんな・・という感じでこれが病院で務める鍼灸師かあと思いました。

 

治療をどうするかも大事ですが、年度末の症例報告のために、評価をどうするかも考えないといけません。

患者さんの嬉しい声を報告してもそれは自己満足になってしまいますので、なんやかんや客観的と言えるデータをとり、変化が見えるといいです。

代表的なのはVASです。100mm の線を引き、その左を全く痛くない状態、その右をこれまで想像できる最高の痛みとしたときに、現在感じる痛みを線を引いて示す方法です。

他にも疾患によってガイドラインで定められている評価や論文などでよく用いられる評価などを参考にしつつも、

痛み以外にもしびれなどの自覚症状が変化したのか、生活面で歩きやすくなったとかQOLに変化があったのか、具体的に歩ける距離が変わったとかスピードが変わったとか、色んな角度から評価をとっておくと変化が追えます。

臨床を普段やっていると、効果があったかどうかは患者さんが良くなったかどうかという主観的な感想によるところが多いかなと思います。

鍼をする前後で可動域を角度や動画で比べたり、痛みの変化をVASで聞くだけでも違うと思いますし、それを蓄積してグラフなどで追えると客観性が増し、怪しげな鍼のイメージか説得力をもって良いなと思いました。

2年間の研修を通じ、鍼灸今後自分がどういう鍼灸をやっていきたいかという方向性がかなり見えてきたと思います!

感想

2年間の研修を終えての感想です。

・大きい病院はすごい
・食堂で食べる昼食が楽しみ
・東大の先生の勉強量がすごい
・OBOG含めいろんな鍼灸師とつながりが持てた
・勉強も技術もまだまだ

ざっくり要約するとこんなもんで・・

新米鍼灸師だと週5で一つの院に勤めてそこに染まっちゃうことを考えると、とにかく学びになりました。

病院内の食堂は私が卒業する時に閉店になっちゃったけども、毎週このために来ている感あるくらい楽しみでした。

研修の日はいつもより一時間早く朝起きないといけなくて、夕方には頭が痛くなることもしばしばあったのですが、

とても楽しく充実した日々を過ごせました。

学んだことを活かしてさらに邁進していきたいと思います!

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。